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男性型脱毛症(AGA)ガイドライン2010年版をあらためてご紹介。現在でも男性型脱毛症に悩むかたに、ぜひ読んでほしい指針です。

現代の日本人の男性で、男性ホルモンが関係した脱毛症、つまり男性型脱毛症(AGA)が発症する確率は、全年齢平均で30%だと言われています。

これは成人男性の10人中3人、約三人に一人は発症することになります。

こう書くと数字のトリックで確率が高く感じますが、逆に言えば10人中7人は発症しません。このように書くとまた感じ方は変わると思います。

とはいえ、30%という数字は気にしなくていい数字ではありません。男性型脱毛症は昔から男子が持つ悩みの一つであり、けっして軽く見られないことも事実です。

そこで私がぜひとも見てほしいものが、公益社団法人日本皮膚科学会が2010年に発表した男性型脱毛症ガイドラインです。

参考リンク:男性型脱毛症診療ガイドライン(2010年版)

この記事の目次(もくじ)

男性型脱毛症ガイドラインができた背景

そもそもこのガイドラインはどうしてできたのでしょうか?その背景には、このようなことがあります。

最近になり男性型脱毛症に有効な外用、内服の育毛剤が開発され、皮膚科診療においても積極的に使用されるようになってきた。しかし、それでもなお皮膚科医の立場からは無効といえる科学的根拠に基づかない治療法が社会的に横行し、無効な治療法を漫然と続ける患者も少なくない。

引用元:男性型脱毛症診療ガイドライン(2010年版)

要は科学的に根拠が無い治療法が多いということですね。

このような現状の中で、科学的根拠に基づいた情報を選び出し、男性型脱毛症の診療ガイドラインを作成することは、医師、患者双方にとって標準的治療法を促進するために重要である。

引用元:男性型脱毛症診療ガイドライン(2010年版)

つまり、科学的に根拠がある正しくて最適な治療法を広めよう、ということで作られたガイドラインです。

おそらく以前までは男性型脱毛症の原因が分からなかったので、科学的根拠をしめすことも難しかったと思われます。

ですが近年では男性型脱毛症に限ってはそのメカニズムがある程度解明されています。

この事実を知っている専門医の方にしてみれば、科学的根拠がない治療法を提供している業者を見ると、苦々しい思いでいっぱいだったと思います。

ちなみにこのガイドラインは男性型脱毛症(AGA*1)に対してのガイドラインです。円形脱毛症や老化による脱毛症には適応されないのでご注意ください。

科学的根拠(エビデンス)とは

この男性型脱毛症ガイドラインでカギとなるのが科学的根拠です。

科学的根拠とは、その現象が起こる際に、それがどのようなメカニズムで、どのような確率で起こるのか、という根拠のことです。

簡単に言えば「これが、〇〇%の割合で、こうなる」といった証拠(根拠=エビデンス*2)があるかということです。

男性型脱毛症ガイドラインは、この分野の専門家(皮膚科医)が集まり、科学的根拠に基づいて作成したガイドラインです。つまり、この男性型脱毛症ガイドラインには、科学的根拠があるものしか書かれていません

なので、ノコギリヤシやセンブリエキスなど、ガイドライン作成時点において科学的根拠が不十分、もしくは無いものは書かれていません

男性型脱毛症ガイドラインに基づいた治療の推奨レベル

男性型脱毛症ガイドラインでは治療法の推奨*3度をAからDの四段階に分けています。

Aがもっとも高く、Dにいったてはまったくオススメできないレベルになっています。

【A】強くすすめられる治療法

男性型脱毛症ガイドラインにおいて、おこなうことを強く勧められる治療法です。

このレベルものは毛髪の再成長の効果に対して、臨床試験などで十分検証され、なおかつ高い確率で効果があることを確認できたものです。

このガイドライン作成時においてはフィナステリドとミノキシジルの二つだけです。

フィナステリド内服

前立腺肥大の治療薬として開発された薬なのですが、男性型脱毛症にも効果があることも発見され、脱毛症治療薬として認可された内服薬です。

作用的には男性型脱毛症の発症原因の一つである2型の5αリダクターゼという還元酵素の生成を抑える働きがあります。前頭部より頭頂部の脱毛に効果が高いと言われています。

副作用があり、薬の購入には医師の診断が必要です。

また女性には効果が無く、お腹の中の赤ちゃんに重篤な副作用が生じるおそれがあるため妊娠中または妊娠している可能性がある女性への使用は禁止されています

このようなことから血液中からフィナステリドの成分が完全に消えるまで献血はできません

また20歳未満に対する国内の臨床試験はおこなわれいないため、薬の安全性が確立されていません。なので10代への販売もおこなわれません

日本ではMSD株式会社(旧万有製薬)がプロペシアとして販売されていますが、健康保険の適応外なので少々お高いです。

ただし近年(2015年)ではフィナステリドのジェネリック医薬品が販売されており、プロペシアよりお求めやすい値段で購入できます。

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ミノキシジル外用

ミノキシジルは元々は高血圧の治療薬として開発されたものですが、後に髪が伸びるなどの効果が発見され、脱毛症の治療薬として認可された薬です。

頭部に塗布するタイプの外用薬として販売されており、日本では大正製薬のリアップとして販売されています。

リアップはフィナステリドのように医師の診断がなくても購入することができ、ドラッグストアなどで販売されています。

この薬は頭頂部のほうが効果があり、前途部には効果が低いと言われています。同じ脱毛症治療薬のフィナステリドとは薬が作用するメカニズムが違うため、薬の併用が可能です。

フィナステリドと違い女性に対する危険な副作用がないため、女性の男性型脱毛症の患者にも使えます

以前は血管拡張による血行改善で脱毛症を改善すると言われていましたが、現在では毛乳頭細胞や毛母細胞の活性化することで脱毛が改善されると言われています。*4

ちなみに元々は高血圧治療用の内服薬なので外用薬以外のものもあるのですが、国内では未認可の薬であること、本来の用途は高血圧治療のための血管拡張薬であること、そして副作用で重篤な症状を引き起こす可能性があることから、脱毛症の治療法としてはオススメできません。

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【B】すすめられる治療法

フィナステリドやミノキシジルのような高い有益性はありませんが、男性型脱毛症の改善に対し十分検証され、効果があるとされるものです。

この項目では、自毛による植毛手術のみ当てはまります。

自毛植毛

頭髪で側頭と後頭部の毛根は、男性型脱毛症の原因の一つである5αリダクターゼの影響を受けません。それを利用して後頭部の毛根(毛包)を脱毛部分に植える手術のことを自毛植毛と言います。

自毛植毛のメリットは髪の毛が定着する生着率の高さと、自毛のため異物反応などの炎症がおこることはほとんど無いことです。あと一回植毛が成功すると後は特別何かをする必要はなく、他の方法のように薬を使用し続けなければならない、といったことが必要ないことです。

デメリットとしては、自分の毛髪を利用しますので髪の毛の総量としては変わらないことと、脱毛がある程度進行してから植毛しないと、後で脱毛が進んだときに植毛した毛髪だけ残り、髪が不自然な生え方になること。そして頭皮を切るなどして移植をおこなう手術であるため、患者への負担が他の方法より大きいことです。

なお自毛植毛は、フィナステリド内服やミノキシジル外用の治療を一年間おこなっても十分な改善が見られない場合、その後の一つの選択肢として考えるように男性型脱毛症ガイドラインでは書かれています

また、男性型脱毛症ガイドラインでは以下のように書かれています。

推奨文:フィナステリド内服やミノキシジル外用により十分な改善が得られない男女の症例に対して、十分な経験と技術を有する医師が行うとよい。

引用元:男性型脱毛症診療ガイドライン(2010年版)

このように、自毛手術を選択する場合は、病院の選択には十分考慮して選んでください。

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【C1】おこなうことを考えてもよい治療法

Cのレベルは、科学点根拠があるとは言えないレベルのものです。

その中でもC1は、臨床試験などで効果は確認されているが、検証が不十分なので根拠があるとは言えないものです。

ただし、このレベルのものは副作用などがかなり軽く、費用や金額など患者に対する負担も少ないため、軽度の男性型脱毛症の患者に対して用いてもよいと推奨できるレベルのものです。

このレベルの中には、ドラッグストアなどで売られている育毛剤も何種類かありますが、だからといって全ての育毛剤がこの推奨レベルだとは言っていませんので、注意してください。

塩化カルプロニウム外用

塗布した部分に局所的に毛細血管を拡張する効果があり、それにより育毛・発毛効果を高める効果が期待できる薬品です。

第一三共ヘルスケアのカロヤンフロジン液に配合されています。フリジン液のほうは配合量がカロヤンより多めで、保険適応してます。

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t-フラバノン

男性型脱毛症では男性ホルモンによって毛乳頭細胞からTGF-βというタンパク質が分泌されます。

これには細胞増殖を抑制する作用があり、そのため毛母細胞の増殖が阻害され、髪の成長が阻害されていると考えられています。

t-フラバノンはこのTGF-βを抑える働きがあり、それによりヘアサイクルの成長期を長期間維持できることが期待されています。

この成分が配合されている育毛剤は花王のサクセスなどです。ただし女性で検証した報告はないため、女性への有効性は分かりません。

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アデノシン

アデノシンは生体内に広く存在している成分で、エネルギーを運んだり、シグナル伝達にかかわっていると言われています。

ちなみに前述のミノキシジルが毛乳頭に働きかけるとこのアデノシンが分泌されるとされ、それにより細胞増殖因子の生成がうながされ、それにより再成長の効果があらわれると考えられています。

この成分が配合されている育毛剤は、資生堂のアデノゲンなどです。

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サイトプリン・ペンタデカン

サイトプリン(6-ベンジルアミノプリン)は、発症時に低下している毛乳頭から発信される発毛促進シグナルであるエフリン(細胞間シグナル分子)やBMP(骨形成因子)を増幅する効果があります。

またペンタデカン(ペンタデカン酸グリセリド)は髪の元となるタンパク質(ケラチン)の合成に必要なエネルギーを供給する効果があります。

この二つの成分が配合されている育毛剤は、ライオンの毛髪力シリーズに配合されています。また女性での効果を検証したものがないため、女性への有効性は分かりません。

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ケトコナゾール

ケトコナゾールは真菌を殺菌する薬で、水虫やカンジダ症の治療にも用いられるのですが。脂漏性皮膚炎にも効くことがわかっています。

ただしケトコナゾールは病院で処方してもらわなければ購入できない薬剤で、医師の診断が必要です。また女性での検証結果はないため、女性への有効性は分かりません。

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【C2】有効性が確認できないため、用いない方がよい治療法

こちらはガイドライン作成時において、その有益性を実証する検証データがないため、用いない方がよいと判断された成分です。ただし、有益性が検証できれば変わるかもしれません。

セファランチン

セファランチンはアレルギーを抑えたり血流をよくする効果がある薬です。

男性型脱毛症での有効性は確認できていませんが、円形脱毛症のほうではガイドラインにおいて内服薬がC1の評価を得ています。*5

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【D】使用しないよう勧告している治療法

このレベルは危険性や有害性が確認できる治療法のため、使用しないよう勧告している治療法です。

女性へのフィナステリド内服

女性にも男性型脱毛症が生じる場合があり、特に更年期に発症することが稀にあります。

これは女性男性型脱毛症(FAGA*6)と呼ばれていますが、フィナステリドの項目で書かれているとおり、女性へのフィナステリドの投与は避けるべきです。

これは女性の男性型脱毛症の患者に対しての検証の結果、フィナステリド内服薬の効果が確認できなかったことが一つあります。

そしてもう一つ、妊婦に投与した場合、男の子の胎児の生殖器官などの発育に影響をおよぼすおそれがありす。

なので妊娠中の女性または妊娠する可能性がある女性、授乳中の女性への投与どころか、薬に触れることすら禁忌となっています

これらのことにより、女性へのフィナステリド内服薬の投与はお勧めできません。

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人工毛植毛

人工毛植毛とは、文字通り人工毛を頭皮に植える植毛手術です。自分の毛髪を使わないので毛髪の全本数が増えることになり、それがメリットだと言われています。

人工毛は技術の発達で本物の毛髪と見た目では判別しづらいものができていますが、基本的には化学繊維で作られている人工物です。結局は異物を皮膚に植え込むむことと同じで、FDA*7(アメリカ食品医薬品局)では事実上使用を禁じれられています。

日本では現在、使用は禁じられておらず医療法上の問題はありません。ですが人工毛植毛には危険性・有害性があり、それを見過ごすことはできません。

よって、人工毛による植毛術はお勧めできません。

2010年のガイドラインは、はたして今でも有効か?

以上が男性型脱毛症ガイドライン(2010年版)の簡単な解説です。

ただ、このガイドラインは2010年に作成されたものです。ずいぶん年月が経った今でも有効なのでしょうか?

この記事を書いている時点(2017年)において、新しい治療法や薬が出てきたりしています。

現にフィナステリドより効果があるとされるデュタステリド(製品名ザガーロ)が国内で2番目の男性型脱毛症の治療薬として認められ、発売されています。

だからといって、このガイドラインは古いものとして軽く見てもいいのかといえば、そんなことはありません。

私の知るかぎり、このガイドラインを否定する根拠を見つけていません

「古い」という意見はあれど、そこに記載されている治療法の有効性は、科学的根拠があり、高い信頼性があると言えます。

男性型脱毛症に対して不安な方、または男性型脱毛症でお困りの方は、まずはこのガイドラインを読んでいただいて、参考にしてみてはいかがでしょうか。

以上、2010年版男性型脱毛症ガイドラインのお話しでした。

出典・参考元リンク

公益社団法人日本皮膚科学会

*1:andorogenetic alopecia の略。ちなみに字通りに訳せば「男性ホルモン型脱毛症」。

*2:英語では「evidence」で、証拠・根拠という意味。

*3:すぐれている点をあげて、人すすめること。オススメ。

*4:ミノキシジルの毛髪再成長の仕組みは、実はまだよく分かっていません。

*5:ただし男性型脱毛症と円形脱毛症では脱毛のメカニズムがまったく違うため、服用しても男性型脱毛症が改善するという保証はどこにもありません。

*6:FemaleAGA

*7:Food and Drug Administration

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